ガルカネズマブ
当院開業前は、手術を業務の中心とする脳外科医として働いてきました。当時の私にとって、頭痛とはくも膜下出血や脳腫瘍という病気を意味していました。だから外来に頭痛の患者さんが来ても、病気がないとなると話しを熱心に聞くことができなかったのだと、今反省しています。開業を前に頭痛について改めて勉強するとその奥の深さに唖然としてしまいましたし、実際に診療させていただくと、頭痛を有する患者さんたちの深い悩みに言葉がなくなってしまいます。特に反復性片頭痛や慢性片頭痛の患者さんたちは何種類もの予防薬を内服し、一ヶ月に何個もトリプタン製剤を内服する、それでも晴れやかな気分になれることはないという状態が続くのです。そうした暗闇の中に、一筋の光となるような薬が承認されました。それがガルカネズマブです。実際使用させていただいた患者さんに笑顔が見られてことは私にとってもうれしいことでした。使用できる患者さんは限られてしまいますが、それでも今後の頭痛診療を変えてくれるかもしれないこの薬に私も期待しています。